2025年4月28日
シネマサロン
The Room Next Door ( La habitación de al lado)
監督 Pedro Almodóval 2024、スペイン
第81回ベネチア国際映画祭 金獅子賞受賞
主人公が死に直面する物語全体は、赤と緑色を多用したポップなファッション、インテリア(アート、書籍)と、軽快な会話で明るく描かれている。
元戦場ジャーナリスト・マーサと古くからの友人で小説家のイングリッド。二人の友情を軸に末期がんのマーサの最後の数か月を共に過ごして欲しいとの申し出に応えるイングリッド。マーサは自分らしく人生を終えようと安楽死を考え、すでに不法に手に入れた薬を持っているという。死の時期は自分で選ぶが、その時には隣の部屋にイングリッドがいてほしいというマーサ。仕事場(ニューヨーク)を離れ、松林の中のコッテージに移る。二人はこれまでの人生を振り返りながら楽しく濃密な時間を過ごす。マーサには旧ユーゴスラビア内戦を取材し、自らのそして他者の死に直面した経験があり、自分の死については十分に考えているという。マーサは「この赤いドアーが閉まっていたら、私はこの世にいないと思ってほしい」と。イングリッドは一度ドアーが閉じている場面に驚かされるが、それは風のいたずらだった。
だがその時は以外にもベランダで訪れた。鮮やかな黄緑色の服を纏い、完璧にお化粧をしたマーサが静かに横たわっていた。高揚し陶酔感を感じさせる顔だった。
安楽死の問題に絡めて、深い友情、仕事、家族との愛や母性(マーサには今は音信不通の娘がいる)まで踏み込み、そしてさらりと終末を迎えるストーリー。
老成期に至ったアルモドーバル監督の見事な思いを感じさせる。
松本益代